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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)865号 判決 1992年3月30日

控訴人

新島近夫

控訴人

新島美知子

右両名訴訟代理人弁護士

金井友正

被控訴人

右代表者法務大臣

田原隆

右指定代理人

三代川俊一郎

外五名

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人らに対し、それぞれ金二二六五万円及びこれに対する昭和五二年五月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行の宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二  当事者の主張

一  原判決の補正

当事者双方の主張は、原判決八枚目表八行目の「通して」を「通じて」と改め、同二七枚目裏三行目の「モントらが」の次に「昭和四三年秋から同四四年はじめにかけて」を加え、同三四枚目表一行目の「(ア)、(イ)の」を削除し、次項の主張を付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

二  当審において付加された主張

1  控訴人らの主張

被控訴人は、インフルエンザ・ワクチンの接種自体には感染予防、発病防止、伝播防止等の有効性がないにもかかわらず、インフルエンザの流行を阻止するためには、流行の増幅となる小、中学校の児童・生徒ら学童に対してこれを接種することが最も効果的であるとして、亡新島和恵が右ワクチンの接種を受けた昭和四八年一二月一二日当時、都道府県知事に対して学童接種の実施方を行政指導した。

(一) インフルエンザ・ワクチンの有効性欠如

(1) 有効性を基礎付けるデータの不存在

インフルエンザ・ワクチンにおいては、接種対象者個々人が生まれてから現在までどのような型、株のインフルエンザ・ウイルスに感染(顕性感染、不顕性感染)してきたかという感染歴がワクチン効果に大きな影響を及ぼすのであるから、インフルエンザ・ワクチンの有効性を判定する場合には、感染歴の不均衡を是正するため大きな集団を公平に二分し、一方には効果の判定を加えようとするワクチンを接種し、他方には偽ワクチン(ブラシーボ、生理的食塩水など)を注射して、両群を比較検討する対照試験(「二重目隠し法」又は「二重盲検法」といわれている。)の方法を用いて科学的薬効の検定をすべきである。しかるに、厚生大臣はインフルエンザ・ワクチンについてはこのような対照試験を行うことなく有効性があると判定しているものであって、有効性の裏付けがない。

(2) 有効性評価の手抜き

インフルエンザ・ワクチンの有効性を客観的に評価するためには、被接種者がウイルス感染により発病したか否かを的確に判定することが必要であるところ、感染した場合の血中抗体価がどの程度上昇するかは明確に知られていないから、感染診断にあたっては、血中抗体価の上昇のみでなく煩雑であってもウイルスの検出や臨床症状を総合して行わなければならないのに、このようなことがされていない。

(3) 不当な有効性の評価

厚生大臣は、インフルエンザ・ウイルスに感染したかどうかの判断の基礎として、流行後の血中抗体価が流行前のそれの四倍以上の上昇があったか否かを指標に設定し、流行後の血中抗体が流行前より四倍以上上昇している場合にはインフルエンザ・ウイルスに罹患したと判定し、そうでない場合にはインフルエンザ・ワクチンによる感染防止の効果があったものとしている。しかし、流行前にインフルエンザ・ワクチンを接種された者の中には、接種により血中に抗体が産生されて時には抗体価が上昇してその値が二五六ないし五一二倍以上に高まり、その後実際にインフルエンザ・ウイルスに感染しても、すでに抗体価が上昇しているため流行前の血中抗体価の四倍以上の上昇を伴わないこともあり(血清抗体価上昇の頭打ち現象。以下「頭打ち現象」という。)、その結果被接種者が実際に感染しても抗体価が上昇せずあたかも感染しなかったものと扱われているものであって、抗体価の四倍以上の上昇の有無を尺度としてインフルエンザ・ワクチンの有効性を判定することは正しくない。

(4) 免疫応答の保守性(抗原原罪原理)

人間の免疫応答は初期に印刻された記憶に忠実で保守的であり、最初に接種されたワクチンに対応する抗体が産生され、その後の変異したワクチンを接種しても対応する抗体は産生されないで、最初に接種されたワクチンに対応する抗体が産生されるにとどまる。すなわち、初感染(ワクチン接種)時の免疫構造を記憶し、以後同種類の抗原をもった病原体の感染又はワクチン等による追加免疫による抗原刺激に対してもすべて初期記憶の抗原に対する抗体産生をもって応じる結果、流行が予想されるインフルエンザ・ウイルスの型を仮に的確に把握し、ワクチンを生成して接種をしても同型のウイルスに対応する抗体を産生しないから、感染防止等には全く寄与しない。

(5) 不活化ワクチンの限界

昭和四〇年頃から、インフルエンザの感染予防には気道粘膜から分泌されるウイルス中和抗体(IgA)が重要な役割を果たしているとの報告が相次いで発表され、皮下に注射される不活化ワクチンでは有効な出現が見られないので、感染予防効果が期待されないのではないかとの理論的な懐疑が提起された。そのため、冷却生菌ワクチンの吸入による予防実験が行われはじめ、その結果、血中抗体は上昇しないにもかかわらず、発病予防効果が著明に認められていることが報告された。また、不活化インフルエンザ・ワクチンの皮下注射法には気道粘膜防衛要素が欠落しているという指摘がなされており、感染予防効果は期待できない。

なお、最近の生ワクチンの投与実験の成績によれば、血中抗体価の上昇が在来法よりはるかに劣るのに、発病予防効果に著しいものがあるとされており、この点からも、インフルエンザ・ワクチン接種者で流行期に血中抗体価の上昇が見られないことをもってワクチンの感染防止効果が存在したものとみることが妥当でないことが明らかである。

(二) 学童媒介論の不当性

わが国では、昭和三七年に当時国立予防衛生研究所に勤務していた福見秀雄が日本醫事新報に「インフルエンザの予防接種論考」と題して発表した学童媒介論を理論的基礎に、インフルエンザに対する防疫対策の方法として保育所、幼稚園及び小、中学校の園児、児童及び生徒を対照に予防接種を行ってきたものであるが、同論文はデータを挙げての論証ではなく、恣意的な仮説展開に過ぎない。したがって、右学童媒介論に基づいて行うインフルエンザ・ワクチンの学童接種は有効性の根拠がない。

(三) ワクチンの非有効性についての主たる文献・報告例

(1) フランシスによる抗原原罪原理説の提唱

昭和三二年、アメリカのフランシスによって、免疫応答の保守性(抗原原罪原理)の学説が提唱され、わが国でもインフルエンザ・ワクチンが開発された昭和三七年当時にはこの考え方に対する主要な文献が発表されていた。そして、同人は同年来日して講演をしており、国内のインフルエンザ研究者にも右学説が周知されていた。

(2) ホスキンスの報告

イギリスのホスキンスらは、昭和四五年から六年間にわたり、イギリスのある全寮制高校で観察した結果、不活化ワクチンの接種は最初はかなり有効であったが、ワクチン接種を繰り返すうちに次第に感染防止効果が低下した旨の報告をしている。

(3) ウエブスターの報告

アメリカのウエブスターは、香港A株に対するある程度の免疫体を有するがポートチャルマーA株に対する免疫体を有しない集団に対して、ポートチャルマーA株のワクチンを接種し、その後被接種者の血中抗体を調べたところ、産生された抗体の大部分は香港A株に特異的なものと両株に共通のものであったが、接種したホートチャルマーA株に特異的なものは少ししか認められなかった旨の報告をしている。

(4) 横浜市衛生研究所の研究成績の報告

横浜市衛生研究所の母里啓子らは、昭和四九年から同五六年までの七年間にわたる市内の小、中学校のインフルエンザ・ワクチンの接種成績をまとめたうえ、集団風邪の発生報告のあった学校とそうでない学校とでのワクチン接種率の差を統計的に観察しても接種率の大小と集団風邪の発生との間には関連性が認められないとし、また、昭和四六年から同五六年までの一〇年間、一五の保健所管内の集団風邪初発二校からそれぞれ五名の患者を無作為抽出して調査した延べ八二〇名について検討を加えた結果、接種歴のある群とない群とに分類しても、感染者が接種歴のない群に多いということはなく、発熱状況、症状の程度についても接種歴の有無との関連性がみられなかった旨の報告をしている。

(四) インフルエンザ・ワクチンの有効性を肯定する被控訴人主張の報告例に対する批判

(1) 園口忠男の報告に対して

同報告は、血中抗体価の四倍上昇を基準として感染診断を行っているものであるところ、抗原刺激に対する血中抗体価上昇の「頭打ち現象」の問題が指摘され、有意義性を肯定すべき報告ではない。

(2) 二重盲検法における杉浦昭の報告に対して

同報告も、血中抗体価の四倍上昇を基準として感染診断を行っているものであるところ、園口の報告と同様の問題が指摘され、有意義性を肯定すべき報告ではない。

(3) モントらの報告に対して

同報告は、香港インフルエンザ流行中の呼吸器疾患についての年齢階層別の週平均罹患率を比較したデータを示しているが、テクムセ、アドリアン両市の日常の呼吸器疾患率の比(1.88)で修正しており、インフルエンザ流行時に対応する超過罹患に対する修正が行われていないし、両市の流行状況の差は、都市の位置ないし都市構造の相違によるものと考えられ、有意義性を肯定すべき報告ではない。

(五) インフルエンザ・ワクチンの有効性を肯定する被控訴人主張の別紙文献一覧表記載の文献に対する批判

(1) 文献の報告年度について

訴外新島和恵がインフルエンザ・ワクチンの接種を受けたのは昭和四八年であるから、ワクチンの有効性に関して検討すべき文献及び実験報告等は、右接種時点以前のものに限定すべきである。

(2) 別紙文献一覧表記載の各文献に基づき作成されたとする別紙表1ないし8について

① 別紙文献一覧表記載の各文献に基づき作成されたとする別紙表1ないし8は、いずれもランダムに分割された二集団に、目隠しのもとにワクチン接種と偽ワクチン接種を割りつけたものではないから、両群の差を単にワクチン効果として評価すべきではない。

② また、右各表は血中抗体価の「頭打ち現象」により、臨床的にはインフルエンザに感染していても血中抗体価が四倍以上の上昇が見られないとして、ワクチン接種群における真正な感染を見過ごし偽りの「感染予防効果」を作り出しているものである。

③ なお、右各表については、比較検討について妥当性を欠くばかりでなく、各表のうちには、接種の地域因子、接種回数因子、流行の地域差等の諸因子の相互の関連状況が明確にされないままに作成されているものもあり、いずれにしても予防効果の関係を明らかにするものではない。

(六) まとめ

以上のとおりであって、被控訴人が、インフルエンザ・ワクチンの予防接種には、ワクチンとしての有効性がないのにかかわらず、有効であると判断したうえ、根拠のない学童媒介論を基礎に、防疫対策の方法としてインフルエンザ・ワクチンについて学童接種の実施を勧奨する旨の行政指導を選択したことは、厚生大臣の裁量権の行使として全く合理性を有せず、許容される裁量権の範囲を逸脱したものであって、明らかに違法である。

2  被控訴人の主張

(一) ワクチン予防接種の有効性(インフルエンザ・ワクチンの有効性欠如に対する反論)

(1) 有効性の判定について(有効性を基礎付けるデータ不存在との主張に関連して)

ワクチンの有効性判定のために、特に二重盲検法が用いられるのは、ワクチンを投与されたとの認識がもたらす心理的な効果(実際には効果がないのに効果があると思い込むこと。)を排除し、判定をより客観的にしようとすることにあるが、インフルエンザ・ワクチンの場合には、原則として血中抗体価の測定に基づき有効性の判定が行われることから心理的効果が入り込む余地はなく、特に二重盲検法をとる必要はない。

(2) 有効性の評価方法について(有効性評価の手抜きの主張に関連して)

ワクチンの有効性の判定方法として、血中抗体価の上昇値の測定及び比較のみではなく、ウイルスの検出や臨床症状のパターン等多様な判定方法を併用することによって測定の精度が高まることは控訴人主張のとおりであるが、抗体価の有意義な上昇の有無を判定することが最も平明かつ確実な目安であり、過去の様々なウイルス性疾患の研究に照しても合理的であり、ウイルスの検出や臨床症状のパターンは二次的な手段にすぎない。なお、ウイルスの分離(検出)法は分離率が良好ではなく、臨床症状は他の風邪症候群における症状とインフルエンザの臨床症状が極めて近似するため、これのみでは判定が不可能である。

(3) 血中抗体価の上昇比較法について(不当な有効性の評価との主張に関連して)

血中抗体価が流行前の抗体価と比較して四倍以上の上昇を示したことをもって罹患したとする判定法は、ポリオ、日本脳炎、BCG及び腸チフス等ウイルスによる罹患全般について用いられているものであり、四倍という基準は、抗体価の有意義な上昇の有無を判定するのに合理的であるとされている。また、抗原抗体反応に「頭打ち現象」が存在することは免疫学の常識であるが、「頭打ち現象」はウイルスに感染しても抗体価の上昇がないほど極度に高い抗体価である場合にあてはまるものであり、一二八倍ないし五一二倍程度の抗体価の上昇にとどまる場合には該当しない。なお、流行前の抗体価の値が一二八倍ないし五一二倍の者であっても流行後に四倍以上の上昇を示した例は数多くある。

(二) 学童接種の相当性(学童媒介論の批判に対する反論)

学童接種の方法は、学童自身の発病を予防するいわゆる個人防衛(感受性対策)と、集団の免疫保有率を高めて国内の流行を防止する社会防衛(感染防止・伝播防止対策)との両面を目指すものであり、インフルエンザ予防において必要かつ有効なものである。

(1) インフルエンザの流行が生じた場合、最も罹患率が高いのは五歳ないし一四歳の年齢層、すなわち、保育所、幼稚園、小学校及び中学校などの児童生徒であり、このような疫学的様相はアジアかぜ流行時から現在に至るまで統計上変化がない。本来、児童生徒は大人と比較した場合、様々な感染症に対する免疫を有していないうえ、一定の閉鎖された場所に集合し集団生活を営んでいるため空気感染によりインフルエンザに罹患しやすい。このような最も罹患しやすい集団に対して、予防措置を講じて集団構成員の発病を予防することは合理的政策である。

(2) また、児童生徒の集合場所である学校もインフルエンザの増幅要因の一つであり、児童生徒の罹患率は統計上も高いので右増幅作用も極めて高いものと見込まれるのであって、相当数の児童生徒が罹患のうえ発病し、ウイルスを家庭内に持込んで家族と接触して家庭内伝播を惹き起こし、ひいては地域社会に拡大させることが予想される。この最も罹患率の高い児童生徒の集団に高い率でワクチンを接種すれば社会防疫上も高い効果を期待できることは当然の事理である。学童接種が社会的防疫上有効であるとする実証的研究も少なからず存在しており、また、これに代替する有効な社会的防疫が存在しないことからすれば、学童接種は合理的政策である。

(3) なお、控訴人が指摘している福見論文は、実証的データとして、昭和三六年のB型インフルエンザの流行時における東京都内の学校の休校、クラス閉鎖に関する資料をあげて、学校がインフルエンザ流行の増幅場所であることを論じており、また、一般論としては小、中学校の学童のインフルエンザ罹患率が高いことを基礎としたうえで、インフルエンザの飛沫感染性の特長を考慮して合理的推論をしているものであって、当時はこの推論に疑問を提起する者はいなかった。

(三) インフルエンザ・ワクチンの有効性を肯定する報告例

(1) 園口忠男の報告

園口らは、昭和四三年から同四四年にかけて流行したインフルエンザ・ウイルスの型と接種したインフルエンザ・ワクチンの型が完全に一致した野外実験において、流行前の抗体価が低いものは感染度が高く、抗体価が一二八倍以上の者からは感染者が出なかった旨の報告をしている。

(2) 二重盲検法における杉浦昭の報告

杉浦は、昭和四三年アジア風邪の流行直前に都内の高校生に対して、二重盲検法に基づき接種群、非接種群に分けてワクチンを接種して対照試験を行い、その結果、罹患防止効果があった旨の報告をしている。

(3) モントらの報告

アメリカのモントらは、昭和四三年アメリカミシガン州のテクムセ市の小、中学校及び高校生にA2/愛知株(香港系)のワクチンを接種し、そこから一二マイル離れたアドリアン市では接種を行わず、その後に生じた香港風邪流行時の学童・生徒の欠席率、地域住民の呼吸器疾患率の比較検討を行い、テクムセ市の方が低い罹患率を示したことから、予防効果が認められた旨の報告をしている。

(四) インフルエンザ・ワクチンの有効性を肯定する文献等の存在

昭和三六年から同六一年までの間における国内で発表されたインフルエンザ・ワクチンの予防効果に関する主要な実験報告は別紙「インフルエンザワクチンに関する主要文献一覧表」(以下「別紙文献一覧表」という。)のとおりであるが、これらの文献からもワクチン接種が感染、発病・重症化等の防止に有効であることが明らかである。

(1) 罹患防止効果の側面

別紙文献一覧表記載の文献の中から、血清学的検査あるいは臨床診断により、一般の風邪患者と区別してインフルエンザの罹患率について考察をしている別紙表1の「文献番号(別紙文献一覧表記載の各文献名の頭に付けられた番号に対応する。以下同じ。)」欄記載の各文献の内容を整理すると、同表記載のとおりとなり、一般的にみて、ワクチン接種群の方が非接種群より罹患率が低くワクチン接種の効果が生じていることが指摘できる。

(2) 不顕性感染効果の側面

インフルエンザではしばしば不顕性感染者(感染していても臨床症状がでない者)が認められ、これが集団内での感染源になるものと考えられるが、別紙文献一覧表記載の文献の中から、不顕性感染例について考察をしている別紙表2の「文献番号」欄記載の各文献の内容を整理すると、同表記載のとおりとなり、ワクチン接種群の方が非接種群の方より感染率が低く、ワクチン接種の効果が生じていることが指摘できる。

(3) 発熱防止効果の側面

別紙文献一覧表記載の文献の中から、インフルエンザ患者の発病後の発熱状況について考察をしている別紙表3の「文献番号」欄記載の各文献の内容を整理すると、同表記載のとおりとなり、ワクチン接種群の方が非接種群より発熱率が低くワクチン接種の効果が生じていることが指摘できる。

(4) 欠席防止・学級閉鎖の防止効果の側面

別紙文献一覧表記載の文献の中から、学童の欠席等について考察をしている別紙表4ないし6の「文献番号」欄記載の各文献の内容を整理すると、同各表記載のとおりとなり、ワクチン接種群の方が非接種群の方より欠席率、平均欠席日数、平均欠席回数のいずれの観点からも低く、ワクチン接種の効果が生じていることが指摘できる。また、別紙文献一覧表記載の文献の中から、学級閉鎖の防止効果、接種率と予防効果、接種時期、接種感覚とワクチンの効果について考察をしている別紙表7および8の「文献番号」欄記載の各文献の内容を整理すると、同各表記載のとおりとなり、ワクチン接種群の方が非接種群の方より学級閉鎖率では顕著な差が見られ、集団内のワクチン接種率が高いと欠席回数、欠席日数、最長欠席日数、欠席率のいずれの観点からも低く、ワクチン接種の効果が生じていることが指摘できる。

第三  証拠<省略>

理由

当裁判所も、控訴人らの請求は失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり付加し訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。

第一原判決についての補正

一原判決三六枚目裏四行目の「37.6度」を「三七度六分」と改め、同三八枚目裏三行目の「主症状は、」の次に「弁論の全趣旨から」を加える。

二同四〇枚目裏一行目の「これと」の次に「ウイルスの培養基として用いられるため」を、同四二枚目裏二行目の「多発」の次に「(五三二例、死亡二五例)」を、同四五枚目表六行目の「行われた」の前に「昭和五一年一〇月一日から同年一二月一六日までの期間中およそ四五六五万人の国民に対して」を、同七行目の「七六型」の次に「又はブタ型インフルエンザ」を各加える。

三同五三枚目裏一行目の「ではなく」の次に「諸臓器の脂肪変性を伴う脳性に関する」を加え、同五六枚目裏六行目の「の実施自体は」を「が」と改める。

四同六三枚目裏五行目の「できる」の次に「とされている」を加え、同六八枚目裏一一行目の「データー」を「データ」と改める。

五同七五枚目表八行目の「有効」を「有力」と、同七八枚目裏二行目の「認められ」を「があるものと判断したことは相当であり」と改める。

六同八〇枚目表八行目の「38.5度」を「三八度五分」と改め、同八一枚裏九行目の「休み」の次に「時間」を加え、同八二枚目表二行目の「36.4度」を「三六度四分」と、同八九枚目裏一一行目の「認められる」を「あるものと判断したことは相当であり」と各改める。

第二当審において付加された主張に対する判断

一インフルエンザ・ウイルスの発見と感染の特徴

1  インフルエンザ・ウイルスの発見

<書証番号略>及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

大正七年スペイン風邪が大流行した時点では未だインフルエンザの病原体は発見されていなかったが、昭和八年になって、その病原体がウイルスであることが発見され、これがインフルエンザ・ウイルスAといわれた。その後、昭和一五年になって、新たにインフルエンザ・ウイルスBが、次いで昭和二五年には同ウイルスCが発見された。右三種のインフルエンザ・ウイルスは、それぞれウイルス体の中心部にある核蛋白の性質が異なるものと考えられており、免疫学的には性質が全く異なるものとされている。その後の研究の結果、ウイルスの核蛋白抗原を同じくしても、感染防御力の互いに異なる数種類のものとしてA、A1、A2の存在が明らかとなり、B及びC各型にも同様に免疫性を異にするウイルスの変異現象が判明し、右A、A1、A2は変異株と称された。さらに研究の結果、ウイルスの変異現象には、およそ一〇年毎に抗原的に全く新しい亜型に変り古い亜型は消えて行く不連続変異と、同じ亜型内で小刻みに起る連続変異とがあり、連続変異の極限において突如として不連続変異が起ることが明らかになった。

2  インフルエンザ・ウイルスにおける感染の特徴

前掲<書証番号略>及び弁論の全趣旨によると、インフルエンザ・ウイルスは抗原変異を起こし、動物にも伝播するため、種全体としては撲滅することができないことに特徴があること、また、インフルエンザ・ウイルスは患者の咳から発せられ健康人がこれを吸込んで感染(飛沫感染)するため伝播速度が極めて早く、しかも、ウイルスの変異により型に合う抗体を保有している者が少ないことから、感染が容易に集団化したうえ、増幅されて一時期に広範囲に伝播して大流行を起こす恐れが顕著であるとされていることが認められる。

二予防ワクチンの誕生と改良

<書証番号略>及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

1  昭和八年にA型ウイルスが発見され、間もなく鶏卵の漿尿膜で純粋培養できることが分り、昭和一九年アメリカでワクチンの製造研究が行われはじめ、初期のワクチンは鶏卵の漿尿膜で培養したウイルスを精製濃縮したあと、ホルマリンで殺菌(不活化)して使用したが、培養基として使った鶏卵蛋白やそれに感染した細菌の毒素を含む可能性のあることが指摘され、また、接種に伴う副作用が大きな問題とされた。そこで、ワクチン製造技術、特にウイルス粒子以外の免疫とは関係のない物質の除去、さらに、ウイルス粒子それ自体の成分からも同様に免疫産生とは関係がなく、ワクチンの副作用に関する物質を除去しワクチンとしての有効成分のみを取り出す研究がなされ、その結果、ゾーン遠心器によって濃縮・精製したインフルエンザ・ウイルス粒子を分解のうえ糖脂質の成分を可溶化して除くようになり、今日のHAワクチンの生成をみるに至った。

2  なお、インフルエンザ・ウイルスに対する血中抗体価が高いほど、罹患率が低くなることが疫学的調査と血清学的研究によって明らかとされ、ウイルス性疾患に対する化学療法が発見されない現状では、インフルエンザに対する防疫的措置としてはワクチン接種が科学的に唯一の方法とされている。そして、ウイルスが侵入門戸の鼻腔や咽頭粘膜などで増殖し、細胞を障害することが直ちに発病につながるインフルエンザの疾患では、侵入局所である気道粘膜におけるIgA抗体が感染防御に有効と考えられており、不活化ワクチンの皮下注射では血中抗体(IgG)は上がるが局所抗体(IgA)がほとんど上がらないことから、不活化ワクチンを鼻腔内に吸入接種する方法も考えられるようになった。しかし、人間に鼻腔内接種を繰り返すことは実用面で難しく、生ワクチンその他の局所免疫を高める方法を検討すべきではないかとの問題指摘にとどまっているのが現状である。

三インフルエンザ予防ワクチンの世界的接種状況

<書証番号略>、証人高橋晄正(当審)の証言及び弁論の全趣旨によると、インフルエンザ・ワクチン接種を実施していない国は昭和三五年当時でもモロッコなど少数の国に過ぎず、多くの主要国では接種の形態が強制接種、任意接種又は臨時強制接種かの相違、あるいは接種の対象者、すなわちハイリスク群(高齢者、虚弱者)や社会的適応群(交通労働者、治安関係者、医療従事者)などに相違があるにしても行われていること、また、世界保健機構(WHO)は、すでに昭和二二年にインフルエンザが全世界にわたって緊急性の非常に高い問題であることを指摘してその対策に着手し、インターナショナル・インフルエンザ・センターを設けて各地から情報を収集してインフルエンザ株の型を決定して勧告をしていること、なお、わが国でも国立予防衛生研究所内にあるインターナショナル・インフルエンザ・センターと相互に情報を交換をして、国内におけるインフルエンザ・ワクチン株の予測及び決定をしている。

四インフルエンザ・ワクチン接種の有効性について

1  控訴人は、インフルエンザ・ワクチンの有効性の存否そのものを争っているが、有効性については疑問を呈する立場から批判がなされ今なお学問的な研究対象となっているところであり、本件訴訟においては、もとよりこのような学問的問題についてその当否を審理検討するのではなく、厚生大臣が、本件インフルエンザ・ワクチンの接種が行われた昭和四八年当時において、インフルエンザ・ワクチンの有効性が存在するとの判断のもとに接種を指導したことが、当時の専門的見解及び報告事例等に照して相当であったか否かを検討すべきものである。

2  そこでまず、本件において提出された証拠のうち、インフルエンザ・ワクチン接種の有効性に関する文献、報告事例等(以下「文献等」という。)として、次のとおりの文献等が存在することが認められる。

(1) ベルの「予防接種群及び非接種群のボランティアにおけるアジア・インフルエンザの人為接種」と題する報告論文(アメリカ医師会雑誌一九五七(16/XI)、一三六六〜一三七三頁。<書証番号略>。以下「文献(1)」という。)

①発表年 昭和三二年

②内容 アメリカにおいて、昭和三二年健康な志願者を二群に分けて、その一群である三二名のボランティアにワクチンを接種し、他方の群である二三名の者には非接種のまま対照群としておき、一定期間経過後に人為的にウイルスを経鼻的に接種し、両群の発病の有無、症状の程度を比較するという実験がH2N2ウイルス出現直後に行われ、対照群の発症率七八%であるのに対して、ワクチン接種群では防御率が四四%であったとし、また、接種群では発病しても発熱の程度が対照群よりも軽く、さらに、その持続も短かったというものである。

(2) フランシスの「インフルエンザウイルスの抗原変異の意義」と題する日本講演(講演記録は昭和三七年総合医学一九巻二〇四〜二一一頁に掲載。<書証番号略>。以下「文献(2)」という。)

①講演の年 昭和三七年

②内容 吸収試験によって、各年齢層の人の血中抗体が何年度に流行したウイルスに対応するものであるかを確定した過程を紹介したもので、その中で、当時A型ワクチンを注射された人は、殆ど当時流行していたAプライム型インフルエンザ(H1、N1、一九四七)に対して免疫抗体をもっていなかったし、このワクチン接種ではAプライム型の感染を防ぐこともできなかった。しかし、高年齢者で当時Aプライム型のインフルエンザに罹患した人については、Aプライム型の免疫体だけでなく、以前に流行したPR―8型(一九三三年)又はWS型(一九三三年)に対する免疫体をも身体の中に多量に産生したということであって、このことは再びこれらのインフルエンザ・ウイルスが共通な抗原をもっているということの強い証拠を与えているというものである。

(3) モデレーターらの「人間のインフルエンザ・ワクチンに対する免疫応答の現状」と題する報告論文(アナルズ・オブ・インターナルメディシン七一巻二号。<書証番号略>。以下「文献(3)」という。)

①発表年 昭和四四年

②内容 アメリカ国立衛生研究所(NIH)臨床部員であるモデレーター、J・A・カセルらはインフルエンザ・ウイルスの感染並びに不活化ワクチン接種に対する免疫応答の最近の状況の一部を素描し、不活化ワクチンでの鼻腔内免疫は、皮下ワクチン接種におけるよりも気道分泌物中の抗体の量と持続期間を増大させ、それに加えて、適当量を用いるなら、この方法での予防接種を受けた人々の大部分の体液性(血清)抗体の水準の上昇をもたらしたとし、初期の人為的感染実験の研究でみると、鼻腔内免疫は感染防御(発病ではない)については、皮下免疫と効果が同じくらいであることを示唆したとするものである。

(4) ワルドマンらの「インフルエンザ免疫の評価―投与ルートとワクチン株の影響」と題する論文(世界保健機関(WHO)会報四一巻五四三〜五四八頁。<書証番号略>。以下「文献(4)」という。)

①発表年 昭和四四年(一九六九年)

②内容 アメリカのフロリダ医科大学のR・Hワルドマンらがフロリダ州のタンパで教師集団二一〇〇名を公平に九群に分け(各群二三〇名前後)、気道免疫(エアゾール投与)、皮下免疫(注射)、ブラシーボの処置をした後に、香港風邪流行下での発病率の野外実験をした結果、臨床的発病率は対照群27.9パーセントに対して、皮下免疫群9.8%、気道免疫群15.8%(いずれも二回接種)であったとするものである。

(5) 園口忠男の「不活化香港インフルエンザワクチンに対する血球凝集阻止抗体反応とその効果」と題する報告論文(世界保健機構(WHO)会報四一巻五一七〜五二三頁。<書証番号略>。以下「文献(5)」という。)

①発表年 昭和四四年

②内容 当時陸上自衛隊衛生学校長であった園口が、昭和四三年一〇月から翌四四年五月までの冬季期間中約三〇〇〇名の自衛隊員に香港インフルエンザ・ワクチンの皮下接種をして野外実験を行い、防御効果について検討した結果、少なくとも母集団の八〇%が予防接種を受けていると、予防接種を受けた者と接種を受けなかった者が密接に関連した状況の中で生活をしているときでも、集団内の接種しない残りの人立ちについてある程度インフルエンザの流行に対し防御できることを示唆したとするものである。

(6) 杉浦昭ほか八名の「不活化A2香港とBインフルエンザ・ウイルスを含んだインフルエンザ・ワクチンの予防効果の評価のための野外実験」と題する報告論文(伝染病雑誌一二二(六)四七〇〜四七八。<書証番号略>。以下「文献(6)」という。)

①発表年 昭和四五年

②内容 国立衛生院微生物疫学部(当時)の杉浦が、新型の香港風邪(A2/香港ウイルス)の流行を予想して、流行に先立つ昭和四三年一一月、東京都港区の某高校在校生を公平に二群に分け、一方には香港ウイルスで製造したワクチン(A2/香港株+B/東京株)を接種し、他方にはブラシーボとして破傷風トキソイドを注射して二重目かくし法で野外実験を行い、接種後二か月してインフルエンザに対する臨床的有効率の差を検討した結果、インフルエンザA型ウイルスに対する感染予防は八〇%、インフルエンザB型ウイルスに対する感染予防は四三%のワクチン有効率を示したとし、なお、インフルエンザB型における疾病の頻度は、抗体の上昇とあまり関連しなかったとしたうえ、ワクチン製造及びHIテストにおける抗原として、流行中のウイルスとの近縁性の極めて近いウイルス株を使用することの重要性を論じたものである。

(7) モントらの報告論文(<書証番号略>。以下「文献(7)」という。)

①発表年 昭和四五年

②内容 アメリカミシガン大学公衆衛生学教室のモントらが昭和四三年、ミシガン州政府の地域保健実態調査プログラム(ECHO)の中で、襲来の予知されていた新しいA香港型インフルエンザの流行に対して、学童・生徒へのワクチン接種が都市全体の流行状況に好ましい影響を与えるかどうかを検討しようと考え、流行直前(最初にA香港ウイルスの検出がされる二週間前)に同州テクムセ市の小、中学校及び高校生を対象としてA2/愛知株(香港系)のインフルエンザ・ワクチンの接種を行い、同市から一二マイル離れたアドリアン市では香港株を含まない普通ワクチンを接種した郊外実験の結果について、普通ワクチンを接種した都市よりインフルエンザワクチンを接種した都市の方がいずれの年齢層でも低い疾患率を示すとともに、学童・生徒への予防接種が全年齢層について予防効果を示したとするものである。

(8) フォイの「単価A2/香港インフルエンザ・ワクチンの一回投与―接種後一四か月後の効果」と題する報告論文(アメリカ医師会雑誌二一七巻八号。<書証番号略>。以下「文献(8)」という。)

①発表年 昭和四六年

②内容 アメリカワシントン大学公衆衛生・地域医学部疫学国際保健病理部のH・Mフォイ、M・Kクーネイらは、昭和四三年の晩秋にシアトル地区の小学生に対してインフルエンザA2/香港ワクチン接種一回後の効力持続期間に関する野外実験を実施し、同年一一月から翌年二月までにインフルエンザA型とインフルエンザB型の同時流行が起り、さらに、ワクチン接種から一四か月経過した昭和四五年一月に流行のピークを迎えたA2/香港株による流行が起こった中で、免疫接種から一四か月経過後の免疫効果について検討したところ、学校での欠席率の有為な低下、インフルエンザ様疾患報告の五八%減少、血清学的検査からの推定で感染の七二%ないし七六%減少、血清学的に確認されたインフルエンザ発病率で八〇%ないし八三%の減少を示し防御効果が明確であったとするものである。

(9) ワルドマンらの「インフルエンザ免疫・大学キャンパスにおける野外実験」と題する報告論文(ジャーナル・オブ・インフェクシアス・ディジージズ一二六巻三号。<書証番号略>。以下「文献(9)」という。)

①発表年 昭和四七年

②内容 アメリカフロリダ州の医科大学医学部のR・Hワルドマン、W・Jコギンスらは、昭和四二年から翌年にかけて、学生七六〇名を公平に四群に分けて、気道免疫、皮下免疫、ブラシボーの処置をしたうえ香港風邪流行下で野外実験を行い、発病率を検討した結果について、発病率は非接種の対照群では20.4%、皮下免疫群では七。四%、気道免疫群では5.6%であったとし、ワクチン接種を受けたすべての群において有意に低下し、なお、エアゾールのワクチン接種(気道免疫)を受けた者は、皮下免疫の処置を受けた者より有意に良好に防御をしていたとし、また、鼻分泌物抗体を誘発する能力に密接に関係したことを示しているとするものである。

(10) ウェブスターの報告論文(<書証番号略>。以下「文献(10)」という。)

①発表年 昭和五一年

②内容 ウェブスターはポートチャルマー株に対する血中抗体を保有しない四三人に対しポートチャルマーA株のワクチンを接種した結果、被検者のうち二七人(62.8%)には以前に流行したA香港株とポートチャルマー株に共通の決定因子に対する抗体を主として生産し、株特異抗体は、前に流行したA香港株に対するものだけで、ポートチャルマーA株に対するものは生産しなかったというものである。

(11) 国立予防衛生研究所学友会編「日本のワクチン(改訂2版)」(<書証番号略>。以下「文献(11)」という。)

①発行年 昭和五二年

②内容 予防におけるワクチンの役割について、ウイルス疾患に対しみるべき化学的療法がない現状では、ワクチン接種が科学的に有効といえる唯一の方法となっているとしたうえ、昭和四六年に行われた市販ワクチン接種後の発病防止効果に関する調査表を掲載し、ちょうどホンコンかぜの流行時に遭遇しているため、罹患状態が的確に把握されており、ワクチン接種群の罹患率が4.1%であるのに対し、対照の非接種群の罹患率は25.1%で、有効率は91.2%となっているとし、このような効果は、ワクチンに含まれるウイルス株の抗原量や、その時の流行ウイルスとの抗原性のずれ方やワクチン接種対照の基礎抗体の保有状態などのため、流行ごとに変動しているが、流行株の変異が大幅なものでない限りワクチン接種は有効であることが証明されているとするものである。

(12) 由上修三らの「インフルエンザワクチン集団接種の効果について―昭和五二年前橋市の流行についての検討―」と題する実態調査報告(群馬県医師会報三五〇、一六。<書証番号略>。以下「文献(12)」という。)

①発表年 昭和五二年

②内容 由上修三、桑島茂夫、八木秀明らは昭和五二年一月から三月にかけて流行したB型インフルエンザについて、前橋市内の小学校、幼稚園及び保育所内の罹患状況の実態を調査し、インフルエンザ・ワクチン集団接種の集団内流行に対する効果を検討した結果、期間内欠席者数の割合は、接種率の高低と無関係であり、低接種率の小学校が流行の先導をしたことはない、集団接種を行わなかった幼稚園、保育所における流行の程度は七〇%以上の接種率の施設と同程度であったとして、結論的にはインフルエンザ・ワクチンの集団接種は本年のインフルエンザ流行において、流行を阻止ないし軽減したとは考え難いとするものである

(13) ホスキンスの報告(<書証番号略>。以下「文献(13)という。)

①発表年 昭和五四年

②内容 イギリスのホスキンスが、全寮制高校で公平に二分した一群に前回流行のウイルスで作った予想株ワクチンを接種したが他群には接種せずに、三年間にわたる三波のインフルエンザの流行の中で臨床的発病率を比較検討した結果、三年間を通じてみるとワクチン接種が発病率の低下に有効であるとはいえないとするものである。

(14) 岸信夫らの「札幌市の小中学生における一〇年間の流行観察からみたインフルエンザワクチンの効果について」と題する調査報告(「臨床とウイルス」七巻九三号。<書証番号略>。以下「文献(14)」という。)

①発表年 昭和五四年

②内容 昭和四八年と昭和五〇年の二度のA香港型のインフルエンザの流行で、小、中学生の効果率は六〇%以下であり、またその家族の罹患率もワクチン非接種群が24.7%であったのに比し、ワクチン接種群でも24.9%を示し両群には差がなかったとするものである。

(15) 杉浦昭の「呼吸器ワクチン・インフルエンザワクチンを中心として」と題する論文(臨床とウイルス一〇巻一号。<書証番号略>。以下「文献(15)という。)

①発表年 昭和五七年

②内容 インフルエンザ不活化ワクチンの注射によって産生された血中抗体が感染防御効果を有するということには、過去四〇年間にわたって蓄積された膨大な実験的あるいは疫学的研究からすでに疑問の余地はないとしたうえ、ワクチンの有効でなかった原因としては、以前に別の株のワクチンの接種を受けたことのある場合には、感染に対する防御効果を表さなかったのである。すなわちワクチンによって与えられる防御効果は永続ではなくウイルスの抗原が変異することに伴って急速に減弱するのみならず、最初のワクチンは二回目以降のワクチンの効果を減殺するという奇妙な現象がみられたとし、ウエブスターの実験結果を引用し、人間の側における免疫応答に内在する惰性であるとし、インフルエンザに対する複雑な免疫応答や感染防御あるいは感染からの回復に関する色々な免疫反応の役割を十分に解明し得る段階ではないとするものである。

(16) 横浜市衛生研究所細菌課、横浜市衛生局・保健所職員一一名の「横浜市立小・中学校におけるインフルエンザ予防接種と集団カゼの届出及びウイルスの分離状況」と題する実態報告(横浜衛研二一、七七〜七九頁。<書証番号略>。以下「文献(16)という。)

①発表年 昭和五七年

②内容 横浜市立小、中学校における昭和四八年から五六年度までの集団カゼ発生届出患者数、昭和四九年度以降の学校別ワクチン接種率の資料をもとにした集計を分析して考察を加えたもので、昭和四九年から五六年の八年間の間に、インフルエンザ・ワクチンは横浜市内の小、中学校で延べ四二〇万人にほどこされ、対象者は三〇〇万人にも及び、インフルエンザの流行因子には、ウイルスの変異をはじめ、個体の感染歴、集団の抗体分布、気象状況等さまざまな因子がからみあっているが、現行の学童に対するワクチンの集団接種による社会防御論は、学校における集団かぜ発生防止の立場からも効果があるとは認められないとし、学童の欠席率により、集団かぜとして学級閉鎖、集団かぜ届出をするかどうかの決定は、他の要素も加味し考えなければならないが、長期にわたり、横浜市という大都市を単位としてみた場合、予防接種の接種率による防御効果の違いはなかったといえるとするものである。

(17) 杉浦昭の「インフルエンザワクチン」と題する論文(臨床と微生物一二巻五号。<書証番号略>。以下「文献(17)」という。)

①発表年 昭和六〇年

②内容 これまでに行われた多数の効果判定の野外実験の大部分において、不活化インフルエンザ・ワクチンの有効率は四〇%から九〇%の間に入っているとして、ワクチン接種により罹患率を、接種を行わなかった場合の六〇%ないし一〇%減少し、この現象は統計学的に有意であるとしたうえ、ワクチンの効果があまり印象的でないことの理由の一つとしては、人の免疫は記憶に基づいているので極めて保守的であり、ウイルス抗原の変化に容易に対応することができない、あるいは新しいワクチン接種を受けた場合にも、体内に産生される抗体は主として以前に経験したことのあるインフルエンザ・ウイルスに対するものであって、最初は不活化ワクチンはかなり有効であるのにワクチンの接種を繰り返すに従い次第に防御効果の低下することが示されている(この理由はウイルス側の抗原変異とこの変化に対応し得ない免疫応答の惰性との矛盾にほかならない。)。また第二の理由として、自然感染のように経気道的に抗原刺激を受けた後には気道粘膜の分泌抗体の産生が起りやすく、それ以後の抗体産生も起りやすくなるが、不活化ワクチンを注射した場合には呼吸器粘膜における抗原刺激がないので分泌抗体の産生が殆ど起らない、自然感染後に得られる免疫反応として細胞傷害性Tリンパ球の誘導があるが不活化インフルエンザ・ウイルスを注射したのでは細胞傷害性Tリンパ球の誘導は極めて少ししか起らないというものである。

3  右文献等のうち、まず、本件インフルエンザ・ワクチンが接種された昭和四八年以前に公表されたものである文献(1)ないし(9)についてみるに、(1)、(4)ないし(9)はいずれも対象者をインフルエンザ・ワクチンの接種者と非接種者に分けてインフルエンザ流行時を経過したのちに防疫効果を比較検討した(野外実験)もので、実験の方法、具体的な数値に差異はあるものの、いずれもインフルエンザ・ワクチンの有効性を明確に肯定する趣旨のものである。これに対し、文献(2)は、A型ワクチン接種によっては同型免疫抗体が生じなかったとするものであるが、必ずしもワクチン接種の有効性自体を否定するものではなく、本件文献(3)は不活化ワクチンによる鼻腔内免疫の有用性を論じたもので、インフルエンザ・ワクチン接種の有効性を前提とするものであって、その有効性を否定するものではない。右文献等の中にインフルエンザ・ワクチンの有効性を明確に否定するものではない。

控訴人は右文献等のうち文献(5)、(6)については、いずれも血中抗体価の「頭打ち現象」の問題点を含んでいる旨指摘したうえ、抗体価の四倍上昇を基準として感染の有無の診断をしているのは相当でなく、資料として適当ではない。また、文献(7)は流行時に対応する超過罹患に関する修正が行われていないし、実験結果は都市の位置等の相違によって生じたものであるとして、いずれも資料としての有意義性を否定する趣旨の主張をし、証人高橋晄正(当審)の証言中には、血中抗体価の「頭打ち現象」があるので、抗体価の四倍上昇をもって感染の有無を判断するのは妥当でない旨の供述がある。しかし、インフルエンザ・ワクチンの有効性に関する野外実験の結果をまとめた前記各論文等を検討しても、特に血中抗体価の「頭打ち現象」を問題とすべきものとしたものはなく、右高橋の証言によってもインフルエンザ罹患の判定基準として「四倍上昇」の基準によることが不合理であるとする見解が一般的であるという趣旨ではないと認められる。また、都市の位置等の相違が、実験結果に何らかの影響を生じることがあるとしても、他の実験結果を総合して判断する上において、その価値を否定することはできないものというべきであり、超過罹患に関しては香港風邪流行期の欠席率曲線の差異を前提とした上で比較検討を加えているのであって右各文献の有意性を否定することはできないというべきである。

なお、文献(12)、同(14)、同(16)はいずれも、インフルエンザ・ワクチン接種後の経過、患者数等を観察した結果に基づく報告で、ワクチン接種の予防効果が認められないとしたものであり、文献(13)は野外実験の結果として、インフルエンザ・ワクチンの接種にインフルエンザ罹患を防止する効果があるとは認められないとするものであるが、これらは、いずれも本件ワクチンが接種された昭和四八年以降に発表されたものであるから、本件ワクチン接種当時において、ワクチンの有効性判断の資料とする余地のなかったものである。しかも、これらの文献が、有効性の有無を判断するについて一個の観察、実験例として有意義な資料となり得るものであるとしても、これによって直ちにインフルエンザ・ワクチンの有効性を否定するに足りるものではないし、本件ワクチン接種後においても、インフルエンザ・ワクチン接種の有効性を認める趣旨の文献(文献(11)、同(15)、同(17)。(15)と(17)は同じ研究者によるもの。)も存在するのであって、本件ワクチン接種後においても有効性の判断に変動を生じさせるに至っているものとは認められない。

右に検討したとおり本件ワクチン接種当時においてインフルエンザ・ワクチン接種の有効性を示す医学上の見解、資料が支配的であり、その後においてもこれに疑問を呈する見解、資料がみられるものの肯定するものもあるのであって、このような事情に加えて、前記三に認定したとおり、任意接種か強制接種か、あるいは接種の対象者について相違が存在するものの、世界の主要な多くの国においてインフルエンザ・ワクチンの有効性を前提としてワクチン接種を実施している状況にあること、また、後記五1(21)において認定するとおり、伝染病予防調査会が昭和五一年三月二二日厚生大臣に対してインフルエンザ・ワクチンが有効であることを前提とする答申をしていることなどの事実を総合すると、厚生大臣が本件行政指導をした昭和四八年当時、インフルエンザ・ワクチンについて有効性を有すると判断したことは相当であって何ら合理性を欠くものではなく、その後の研究等によってもこれが裏付けられているというべきである。なお、控訴人は、インフルエンザ・ワクチンの有効性を二重盲検法によって調査したデータが存在せず、また、有効性の評価・判断の方法に問題がある旨主張するが、有効性の判断のため、特に二重盲検法による調査の裏付けを必要とするとの合理的根拠はなく、さらに、有効性の評価・判断に関する問題指摘は、血中抗体価の「頭打ち現象」を前提としたうえ抗体価の四倍上昇をもって感染の有無の判断とすることは不合理であるとの論拠によるとみられるところ、右基準が不合理であるとする見解が一般的であるとは認められないから、右主張はいずれも採用できない。

五学童接種(学童媒介論)について

1  控訴人は、学童媒介論には何ら根拠がないのに、これを基礎として厚生大臣は児童・生徒にインフルエンザ・ワクチン接種についての行政指導をした旨主張するので検討するに、前掲<書証番号略>、以下に示す各文献等における括弧内に示したいずれも成立に争いのない各書証及び弁論の全趣旨によると、インフルエンザの流行と学童の関係について、次のとおりの内容の文献等の存在することが認められる。

(18) 福見秀雄らの「アジアかぜ流行史―A2インフルエンザ流行の記録―」と題する論文(財団法人日本公衆衛生協会発行。<書証番号略>。以下「文献(18)という。)

①発表年 昭和三五年

②内容 全国保健所職員及びその家族調査の集計、京都市民の任意抽出調査の成績、京都市保健所職員及びその家族の調査成績、東京都における学童及びその家族の調査集計、東京都保健所職員及びその家族の調査成績の集計を基礎に検討を加え、昭和五七、五八年のアジアかぜA2型ウイルスにおいて、同一の暴露条件をもつならば、どの年齢階層においても同じ罹患が観察されなければならないが、全国保健所職員及びその家族を対象とした調査では、年齢別罹患率については学齢期において最も高く、それより若年齢層及び高年齢層に行くに従い罹患率が急速に低下しており、年齢別の暴露率の相違と解釈され、これは学齢期の者が最も多く集団生活を営み、特に学校というインフルエンザにとっては最も好適な環境に多く置かれているということで、A2型ウイルスに対する暴露率が最も大きかったものであるとするものである。

(19) 福見秀雄の「インフルエンザの予防接種論考」と題する論文(日本醫事新報一九七五号。<書証番号略>。以下「文献(19)という。)

①発表年 昭和三七年

②内容 当時国立予防衛生研究所に勤務していた福見秀雄が唱えた見解で学童媒介論と称せられており、その内容は、患者がウイルスを学校に持込むと、インフルエンザの流行は本格化し、学校で感染した学童は逆にウイルスを家庭に持込むことになり、それによって流行が増幅されて家庭に侵入し流行はそれなりに進展し、一時は学校流行と平行して進行するがやがて家庭流行だけが後に残るとし、インフルエンザの流行阻止の重点は学校であるというものである。

(20) モントらの報告論文(文献(7)と同じ。以下学童接種に関する部分については文献(20)という。)

①発表年 昭和四五年

②内容 学童接種との関連では、学童は罹患率も高く、学童が普通の呼吸器疾患の場合と同様にインフルエンザでもこれを家庭に持込む元凶らしく、多数の学童にワクチンを接種すれば、彼等自身が感染を免れるためばかりでなく、その地域社会での感染経路を断つことができるので、流行が抑止できるのではあるまいかとの視点から野外実験結果について検討を加え、分離されたウイルスの過半数が成人から採取した検体からのものであるという事実を基礎に、学童にワクチンを接種したことが地域社会におけるウイルスの連鎖伝播を抑えたと思われると推論し、隣接地域でも学童にワクチンを接種をしていたならウイルスの侵入頻度はさらに低くなり、インフルエンザの流行も小さなものになっていたであろうとし、さらに、普通ワクチンを接種した都市の二〇ないし二九歳の年齢層の罹患率が特に高いのは、多分家族中の予防接種していない学童からひどく感染を受けたことと関係しているとするものである。

(21) 伝染病予防調査会の答申(<書証番号略>。以下「文献(21)という。)

①答申年 昭和五一年三月二二日

②内容 伝染病予防調査会が昭和四三年五月三一日厚生省発衛第一〇一号をもって厚生大臣から諮問のあった「今後の伝染病予防対策のあり方」に対して、わが国におけるインフルエンザは、保育所、幼稚園、小、中学校など集団生活をする小児により流行するので、これらの集団の免疫度を一定水準に維持するため、予防接種を行う必要があるとするものである。

(22) アメリカCDC(疾病管理センター)調査団の調査報告(掲載文献は伝染病雑誌一四一巻二号。<書証番号略>。以下「文献(22)という。)

①発表年 昭和五四年

②内容 アメリカCDC(疾病管理センター)の研究員ドウドルほか四人が昭和五四年、日本のインフルエンザ・ワクチンの定期学童接種を調査した報告書の中で、学童接種がインフルエンザの伝播率、罹患率、死亡率等についてどのような効果を与えているのか全く分らないとするものである。

(23) ロンジニらの「家庭及び社会におけるインフルエンザの伝播の推定」と題する論文(AMERICAN JOUR-NAL OF EPIDEMIOLOGY一一五巻五号。<書証番号略>。以下「文献(23)という。)

①発表年 昭和五七年

②内容 昭和五〇年から同五四年までテキコムサーにおける呼吸器疾患の研究及びシアトルにおけるインフルエンザの血清学とウイルス分離に基づく統計データの分析から、一八歳未満の家族構成員がいる家庭の人が社会から感染を受ける可能性は、どの年齢においても、子供がいない家庭の成人の場合より約二倍高いと結論できるとして、このことは、学校、保健所及び子供が集る集団が、伝播に重要な役割を果たすことを示唆しているとするものである。

(24) 北山徹の「インフルエンザワクチン」と題する論文(小児科MOOK二三号。<書証番号略>。以下「文献(24)という。)

①発表年 昭和五七年

②内容 昭和三二年のアジアかぜの流行時のクリーブランドにおける調査でも、学齢期の子供から始まった場合が四三例(八三%)となっていて学童の流行増幅に果たす役割の重要性が指摘されているが、このような成績もその後の流行での調査では必ずしも同様ではなく、むしろその様相は一変して罹患率は全年齢層を通じて不変であるという成績の方が多くなっているとするものである。

(25) 厚生省大臣官房統計情報部の「昭和四八年伝染病及び食中毒統計」(<書証番号略>。以下「文献(25)という。)

①発行年 昭和四九年

②内容 国内の昭和四八年のインフルエンザ罹患者総数は二〇万一〇三四人で、年齢別では、〇歳から五歳未満が四五七七名、五歳以上一〇歳未満が五万五六二一人、一〇歳以上一五歳未満が一〇万〇七三六人、一五歳以上二〇歳未満が二万四〇九四人で、その余の二〇歳以上及び不群の合計が一万六〇〇六人であることを示している。

2  右文献等からすると、本件ワクチン接種時以前に存在した文献等は文献(18)ないし同(20)である(ただし(18)と(19)は同じ研究者によるもの)ところ、いずれも学童がインフルエンザの伝播、増幅に重要な役割をなし、学童に集団的にインフルエンザ・ワクチンを接種することによってインフルエンザの伝播拡大を防止する効果が期待できるとするものであり、その後に発表されたものも文献(22)が学童接種の効果は不明とするものであり、同(24)が学童の罹患率が高いということはないとするほかは学童接種の有効性を裏付けるものである。以上によって判断すると、厚生大臣が本件行政指導をした昭和四八年当時、インフルエンザの学童に対する伝播、学童を介しての罹患の増幅を阻止するため、学童接種が効果的であると判断したことは相当であって何ら合理性を欠くものではないというべきである。

六まとめ

以上のとおりであって、厚生大臣がインフルエンザ・ワクチンが有効であり、かつ、インフルエンザの流行を阻止するためには同ワクチンを学童に接種するのが効果的であると判断したことは相当であり、同判断に基づき昭和四八年当時各都道府県知事に対して学童接種の実施方の行政指導をしたことには何ら違法はないというべきである。

第三結論

よって、控訴人らの各請求を棄却した原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用については民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官川上正俊 裁判官井上稔 裁判官石井健吾は転任につき、署名、押印することができない。裁判長裁判官川上正俊)

別紙インフルエンザワクチンに関する主要文献一覧表<省略>

(表1)

ワクチンのり患防止効果

流行型

接種年

流行年

対象

確認方法

接種群のり患率

非接種群のり患率

効果率

**

文献

番号

Aソ連

1980

1981

小学校

抗体測定

18/85*

21.2%

12/31*

38.7%

45.2%

3

1983

1984

161/477

33.8

110/213

56.1

39.8

3

1983

1984

保育園

34/134

25.4

14/27

51.9

51.1

4

A香港

1975

1976

高校

97/278

35.5

34/60

56.7

37.4

5

1982

1983

小学校

34/435

7.8

55/129

42.6

81.7

3

10/341

2.9

25/139

18.0

83.9

6

中学校

34/449

8.2

13/25

52.0

84.2

6

高校

11/50

22.0

31/66

47.0

53.2

7

保育園

27/120

22.5

16/35

45.7

50.8

4

小学校

臨床症状

5116/21518

23.8

977/2491

40.0

40.5

8

中学校

2618/9642

27.2

432/1259

34.3

20.7

8

B

1976

1977

小学校

97/364

26.6

84/135

62.2

57.2

9

1981

1982

小・中学校

抗体測定

55/560

9.8

170/731

23.3

57.9

10

小学校

135/467

28.9

56/158

35.4

18.4

3

1984

1985

臨床症状

1359/4640

29.3

281/533

52.7

44.4

11

* 患者数/調査数

**

(1-

接種郡のり患率

)×100

非接種郡のり患率

(表2)

不顕性感染率

接種年

流行年

流行型

対象

接種群

非接種群

文献

番号

調査数

患者数

不顕性

患者数

%*

調査数

患者数

不顕性

患者数

%*

1981

1982

B

小・中学校

560

60

5

1.0

731

212

23

4.4

10

B

小学校

443

119

11

3.4

147

48

3

3.0

3

1982

1983

A香港

422

29

4

1.0

100

29

9

12.7

3

1983

1984

Aソ連

471

150

9

2.8

208

90

17

14.4

3

不顕性患者数

調査数―患者数

×100)

(表3)

発熱に対する効果

流行型

接種年

流行年

対象

診断方法

接種群り患者

の発熱率

非接種群り患者

の発熱率

効果率

**

文献

番号

Aソ連

1980

1981

小学校

抗体測定

13/76*

17.1%

10/28*

35.7%

52.1%

19

A香港

1972

1973

小・中学校

18/400

4.5

15/109

13.8

67.4

1974

1975

7/189

3.7

3/37

8.1

54.3

12

1982

1983

小学校

37.5℃以上

2/341

0.6

10/139

7.2

91.2

6

中学校

抗体測定

23/449

5.1

9/25

36.0

85.6

6

高校

38℃以上

5/50

10.0

20/66

30.3

67.0

7

B

1981

1982

小・中学校

抗体測定

45/560

8.0

143/731

19.6

95.9

10

小学校

119/443

26.9

48/147

32.7

17.7

3

37℃以上

124/373

33.2

124/221

56.1

40.8

20

小・中学校

臨床診断

38℃以上

1976/17975

11.0

128/987

13.0

15.4

14

1984

1985

保育園

臨床診断

871/3620

24.1

836/2926

28.6

15.7

21

905/4086

22.1

836/2926

28.6

22.7

21

* 患者数/調査数  ** (1 -

接種郡のり患者の発熱率

非接種郡のり患者の発熱率

×100)

(表4)

ワクチンの欠席防止効果

流行年

流行型

対象

接種群

非接種群

文献

番号

調査数

欠席数

欠席率

調査数

欠席数

欠席率

1980

B

小学校

966

279

28.9

94

39

41.5

13

1982

B

小・中学校

18,045

4,442

24.6

998

311

31.2

14

1983

A香港

小学校

341

6

2.9

139

14

10.1

6

中学校

449

34

7.6

25

10

40.0

6

(表5)

ワクチン接種と欠席日数

流行年

流行型

対象

平均欠席日数

文献

番号

接種群

非接種群

1973

A香港

小学校

0.75日

1.38日

12

1981

Aソ連

2.3

3.2

15

1982

B

幼・小・中学校

1.564

2.307

16

小・中学校

2.9

3.3

14

1983

A香港

小学校

2.5

3.2

6

中学校

0.75

1.38

12

1985

B

小学校

1.711

2.439

17

A香港

1.468

2.031

18

(表6)

ワクチン接種と平均欠席回数

流行年

流行型

平均欠席回数

文献

番号

接種群

非接種群

1982

B

0.832回

1.125回

16

1985

B

0.896

1.165

17

A香港

0.722

0.918

18

(表7)

学級閉鎖防止効果

接種年

流行年

流行型

対象

接種群の閉鎖率

非接種群の閉鎖率

文献

番号

1985

1985

A香港

小学校

7/67*

10.4%

20/67*

29.9%

22

幼稚園・中学校

5/136

3.7

81/136

59.6

22

*学級閉鎖数/総閉鎖学級数

(表8)

接種率と予防効果

接種年

流行年

流行型

接種率70%以上

接種率70%以下

文献

番号

1981

1982

B

学級閉鎖 7.4%

学級閉鎖 13.0%

16

欠席回数 0.81回

欠席回数 1.16回

16

欠席日数 1.61日

欠席日数 2.45日

16

最長欠席日数1.32日

最長欠席日数1.93日

16

1982

1983

A香港

欠席率 26.1%

欠席率 31.4%

8

1984

1985

B

学級閉鎖 8.7%

学級閉鎖 20.5%

17

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